甲状腺の病気について

腫瘍性疾患

腫瘍性疾患とは(腫瘍の種類と特徴)

■甲状腺のしこりについて

甲状腺のしこりは、めったに機能異常を伴わず、悪性であっても多くは根治が期待できます。
甲状腺のはれ方には、バセドウ病や橋本病などのように甲状腺全体がはれる「びまん性甲状腺腫」と、甲状腺が部分的にしこりのようにはれる「結節性甲状腺腫」があります。
甲状腺の腫瘍は、いずれも20歳代から50歳代の女性に多く、しこりがあるだけで、ほかには何も自覚症状がないのが特徴です。
しこりというと、すぐに頭に浮かぶのは、がんのことだと思います。甲状腺の腫瘍は、良性と悪性、さらに腫瘍とよく似た「過形成」という状態がありに分類されます。過形成は正常組織と同じように細胞が増殖したもので、良性です。一番注意しなければならないのは、がんなどの悪性腫瘍です。したがって検査では、良性か悪性かを鑑別することが重要な目標にされています。

しかし、仮にがんであったとしても、甲状腺のがんのほとんどは非常にたちがよいといわれ、他臓器のがんと比べて進行が遅く、比較的治しやすいがんです。ですから、過剰な心配をしないで治療に臨んでください。
甲状腺のしこりは、次の3つに分類されています。

甲状腺の良性腫瘍 : 腺腫
腺腫は良性腫瘍
腺腫は、甲状腺の左右どちらか一方にしこりがひとつだけできるのが特徴です。男女比は1対10くらいで、女性に多い病気です。大きさは、触るとやっとわかる程度のものから、下が向けなくなるほど大きなものまであります。しかしどんなに大きくなっても、呼吸が苦しくなったり、ものが飲み込みにくくなるようなことはほとんどありません。
ごくまれに、しこりが甲状腺ホルモンを過剰に生産し、バセドウ病のように甲状腺機能亢進症の症状を現すことがあります。これは、この病気を初めて報告したアメリカの医師の名前をとって、プランマー病(中毒性単結節性甲状腺腫)と呼ばれています。日本人にはまれといわれていましたが、最近は検査法の進歩により発見されることが多くなりました。
腺腫と似た変化を起こすもの(過形成): 腺腫様甲状腺腫
腺腫と似たしこりを作る腺腫様甲状腺腫
典型的な腺腫様甲状腺腫では、左右の甲状腺に大小さまざまな大きさのしこりがいくつかできます。このしこりがたくさんできると、外見上はくび全体が大きくはれたように見えます。
腺腫に比べると大きなものが多く、なかには鎖骨より下の胸の方まで入り込むもの(縦隔内甲状腺腫)もあります。
この病気は本来良性ですが、時には一部にがんが含まれていることがあります。したがって、きちんと鑑別診断を受けることが大切です。また日本では少ないですが、長い間放置すると甲状腺機能が亢進することもあります。
悪性腫瘍 : がん、まれに悪性リンパ腫
性質がおとなしい甲状腺がん
甲状腺のしこりのうち、約20%はがんです。男女共通のがんは、たいてい男性の方が多いのですが、甲状腺がんは例外的に女性の方が、男性よりも約5倍ほど多くかかります。さいわい他のがんに比べると、甲状腺のがんは進行が遅く、治りやすいものが多いのが大きな特徴です。
甲状腺がんには、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、未分化がん、髄様がん、悪性リンパ腫、の6つがあります。髄様がんはやや特殊ながんで、ほかと比べるとまれながんです。乳頭がんと濾胞がんは、細胞が成熟していて発育が遅いので、分化がんとも呼ばれます。
人間の体は細胞が集まってできていますが、複雑で特殊な働きをする細胞ほど、より分化(成熟)した細胞といえます。したがって、がん細胞は分化の度合いが高いほど転移しにくく、悪性度が低いといえます。
(1) 乳頭がん

甲状腺がんの8割以上を占めるのが「乳頭がん」という、進行が遅くおとなしいがんです。このがんは、早い時期にはただしこりがあるだけで、進行もきわめてゆっくりとしています。また、乳頭がんが進行すると、息苦しくなる、声がかすれる、ものが飲み込みにくい、といった症状が現れますが、たいていの人は、くびのしこりに気づいた時点で病院の診察を受けるため、最近ではここまで進行した患者様は珍しくなりました。
乳頭がんは、遠くの臓器に転移することは多くありませんが、比較的早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することは少なくないため、なかには、くびの側面にあるリンパ節がはれて異常に気づく人もいます。しかしリンパ節に転移しても、そこでの成長もゆっくりとしているので、この時点で治療をしてもすっかり治ることが非常に多いのです。当院での手術成績を見ても、乳頭がんの10年生存率※は、90%を越えています。がんとしては、極めてよく治るがんといっていいでしょう。

※他臓器のがんの場合は、手術後5年位で治ったかどうか判断されます。

(2) 濾胞がん

次に多いのは「濾胞がん」で、甲状腺がんの8%ほどを占めています。これもおとなしいがんで、しこりがあるだけでほかには異常がない場合がほとんどです。ただしこのがんは、リンパ節への転移が少ないかわりに、肺や骨など遠いところに転移することがあります。しかし、これも進行が遅く、早期に治療をすれば、治る率はかなり高いがんです。当院での10年生存率は、84%になっています。

(3) 低分化がん

甲状腺乳頭がんや濾胞がんのなかで、組織学的に低分化成分が含まれるがんは、低分化がんと呼ばれています。通常の乳頭がんや濾胞がんに比べ進行がやや早いため、悪性度は乳頭がんや濾胞がんより少し高く、未分化がんよりは低い位置づけになります。

(4) 髄様がん

甲状腺がん全体の1~2%ほどを占める特殊ながんです。乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできるがんではなく、カルシトニンと言う血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。髄様がんのうち、3分の1は家族性(遺伝性)に発生します。このため、遺伝性の髄様がんは遺伝子検査により、がんが発生する遺伝子があるかどうかを診断できるようになっています。
また髄様がんのなかには、副腎の褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症などほかの内分泌腺の病気を合併するものがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。

(5) 未分化がん

未分化がんは非常に未熟な細胞であるため、発育が急速で悪性度の高いがんです。高齢者に多く、若い人にはみられません。また、未分化がんは甲状腺がんの2%くらいに過ぎません。
甲状腺がんはどれも女性に多くみられ、男性対女性の比率は、乳頭がん、濾胞がんでは1対6です。しかし未分化がんでは1対2と、男女の差が小さくなります。

右の図は年齢分布です。乳頭がん、濾胞がんは比較的若い人に見られます。しかし未分化がんだけは、胃がんや肺がんなどと同じように50歳以上、とくに60歳以上の高齢層に発生します。
一般に、若い人のがんは進行が早くたちが悪いといわれますが、甲状腺がんの場合は例外です。よく治るがんであるからこそ、しこりに気づいた時はすぐに検査を受けてください。
このほか、甲状腺の悪性腫瘍には、がんとは別にまれに悪性リンパ腫があります。

(6) 悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、全身のあらゆるリンパ組織を起源に起こってきます。甲状腺にはもともとリンパ組織はありませんが、リンパ球が浸潤(周囲の組織を侵していくこと)するような橋本病では、悪性リンパ腫を発症することがあります。甲状腺原発の悪性リンパ腫は、悪性リンパ腫全体の約1~2%を占め、甲状腺原発悪性腫瘍の2~5%を占めます。
甲状腺の悪性リンパ腫は橋本病を基盤として起こることが多く、当院の統計では悪性リンパ腫の患者様のなかで82%の人が橋本病を合併しており、また男女比が1:4.3と、女性に多くみられます。
この病気の場合、急に甲状腺が大きくなったり、腫瘍のようにはれてくるのがもっとも特徴的な症状です。また大きくなってくると、飲みづらい、声がれ、呼吸が苦しい、などの症状が出ることがあります。
検査方法としては、超音波検査(エコー)細胞診(エコー下穿刺吸引細胞診 )でこの病気を疑い、確定診断のためには甲状腺試験切除(生検)を行います。治療法は、悪性リンパ腫のなかのさらに細かい分類や、病気の広がりによって決まりますが、化学療法、放射線治療などを行います。なお、当院での5年生存率は93.7%となっています。

甲状腺の病気
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