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しかし、仮にがんであったとしても、甲状腺のがんはほとんどが非常にたちがよいといわれ、一般のがんと比べて進行が遅く、比較的治しやすいがんです。ですから、心配をしないで治療に励んでください。 甲状腺の腫瘍は、次の3つに分類されています。
(1) 乳頭がん
甲状腺がんの8割以上を占めるのが「乳頭がん」という、進行が遅くおとなしいがんです。このがんは、早い時期にはただしこりがあるだけで、進行もきわめてゆっくりとしています。また、乳頭がんが進行すると、息苦しくなる、声がかすれる、ものが飲み込みにくい、といった症状が現れますが、たいていの人は、くびのしこりに気づいた時点で病院の診察を受けるため、最近ではここまで進行した患者様は珍しくなりました。 乳頭がんは、遠くの臓器に転移することは少ないのですが、割合早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することが少なくないため、なかには、くびの側面にあるリンパ節がはれて異常に気づく人もいます。しかしリンパ節に転移しても、そこでの成長もゆっくりとしているので、この時点で治療をしてもすっかり治ることが非常に多いのです。当院での手術成績を見ても、乳頭がんの10年生存率※は、90%を越えています。がんとしては、極めてよく治るがんといっていいでしょう。 ※普通は、手術後5年で治ったと判断されます。 (2) 濾胞がん 次に多いのは「濾胞がん」で、甲状腺がんの8%ほどを占めています。これもおとなしいがんで、しこりがあるだけでほかには異常がない場合がほとんどです。ただしこのがんは、リンパ節への転移が少ないかわりに、肺や骨など遠いところに転移することがあります。しかし、これも進行が遅く、早期に治療をすれば、治る率はかなり高いがんです。当院での10年生存率は、84%になっています。 (3) 低分化がん 甲状腺乳頭がんや濾胞がんのなかで、組織学的に低分化成分が含まれるがんは、低分化がんと呼ばれています。通常の乳頭がんや濾胞がんに比べ進行がやや早いため、悪性度は乳頭がんや濾胞がんより少し高く、未分化がんよりは低い位置づけになります。 (4) 髄様がん 甲状腺がん全体の1~2%ほどを占める特殊ながんです。乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできるがんではなく、カルシトニンと言う血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。髄様がんのうち、3分の1は家族性(遺伝性)に発生します。このため、遺伝性の髄様がんは遺伝子検査により、がんが発生する遺伝子があるかどうかを診断できるようになっています。 また髄様がんのなかには、副腎の褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症などほかの内分泌腺の病気を合併するものがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。 (5) 未分化がん 未分化がんは非常に未熟な細胞であるため、発育が急速で悪性度の高いがんです。高齢者に多く、若い人にはみられません。また、未分化がんは甲状腺がんの2%くらいに過ぎません。 甲状腺がんはどれも女性に多くみられ、男性対女性の比率は、乳頭がん、濾胞がんでは1対6です。しかし未分化がんでは1対2と、男女の差が小さくなります。
(6) 悪性リンパ腫 悪性リンパ腫は、全身のあらゆるリンパ組織を起源に起こってきます。甲状腺にはもともとリンパ組織はありませんが、リンパ球が浸潤(周囲の組織を侵していくこと)するような橋本病では、悪性リンパ腫を発症することがあります。甲状腺原発の悪性リンパ腫は、悪性リンパ腫全体の約1~2%を占め、甲状腺原発悪性腫瘍の2~5%を占めます。 甲状腺の悪性リンパ腫は橋本病を基盤として起こることが多く、当院の統計では悪性リンパ腫の患者様のなかで82%の人が橋本病を合併しており、また男女比が1:4.3と、女性に多くみられます。 この病気の場合、急に甲状腺が大きくなったり、腫瘍のようにはれてくるのがもっとも特徴的な症状です。また大きくなってくると、飲みづらい、声がれ、呼吸が苦しい、などの症状が出ることがあります。 検査方法としては、超音波検査(エコー)、細胞診(エコー下穿刺吸引細胞診 )でこの病気を疑い、確定診断のためには甲状腺試験切除(生検)を行います。治療法は、悪性リンパ腫のなかのさらに細かい分類や、病気の広がりによって決まりますが、化学療法、放射線治療などを行います。なお、当院での5年生存率は93.7%となっています。 |













