無作為化比較試験 (臨床研究)への取り組み
当院は甲状腺疾患専門病院で、お陰様で多くの患者様にご来院いただいております。単一施設での甲状腺疾患の患者数でみますと世界的にも指折りの施設であり、これまでも数多くの研究成果を報告してまいりました。今後も、患者様のためになる研究成果を国内外に発信していくことも我々の使命であると考えております。
現在、新しい検査、治療や薬剤などの有用性を評価するためには無作為化比較試験(RCT)が必須で、あらゆる疾患の臨床研究について世界中でこの試験が行われています。当院も積極的に無作為化比較試験を行うことで、より良い医療を患者様に提供するべく努力してまいります。過去の医療は医師の経験に頼った医療の選択が行われていたことは否めません。最近では科学的根拠に基づいた医療に対する意識が高まり,
医療の選択を可能な限り論理的に行うようになってきました。
無作為化比較試験では、どちらがより優れた医療かわかっていない2つの方法(例えば治療Aと治療B)について、担当医以外が割り振ります。明らかにどちらかが優れていると分かっている医療に関して、この試験が行われることはありませんので、どちらに割り振られても現時点で患者様ご自身が不利益を被ることはありません。この試験の結果で例えば10年後に、一方の治療法(例えば治療A)が優れていると結論が出れば10年後の患者様は迷わず治療Aを選択することができます。※
当院における本試験は無作為化比較試験検討委員会および倫理委員会で、その研究の妥当性、安全性を十分議論し、患者様に不利益をもたらさないデザインでのみ実施されます。日常診療におきましては、従来から伊藤病院を受診されている患者様は今後何かしらの臨床試験に割り振られたとしても不利益を被ることはありませんし、ご同意いただけない場合でも何ら不利益を被ることなく引き続き診療を受けて頂くことが可能です。
ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
※RCTによる事例
現在、乳癌の治療において全摘ではなく部分切除(乳房温存手術)が受け入れられているのは、1970年代のイタリアにおける大規模な無作為化比較試験の結果によるものです。