亜急性甲状腺炎とは
亜急性甲状腺炎は甲状腺の痛みや発熱を伴い、甲状腺に炎症が起こる病気です。「亜急性」の症状は「急性」より長く続きますが、慢性的に続くわけではありません。男性より女性に多く、30~40歳代の女性に多く発症します。
原因
亜急性甲状腺炎の原因はまだ明らかになっていません。風邪のような症状に続いて起こることが多く、発症にウイルスが関与しているのではないかと考えられていますが、結論はでていません。
症状
亜急性甲状腺炎の症状は、炎症が強いときに一時的に現れますが自然に改善します。
- (1)炎症による症状
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・甲状腺の痛み
嚥下時や触ったときに痛みを感じるくらいの軽いものから、何もしなくても耳や胸まで放散するような強い痛みまで様々です。
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・甲状腺のはれ
甲状腺全体や左右片方のみが硬くはれます。
はれも痛みも左から右など時間とともに位置が移動することが特徴的です。 -
・発熱
微熱~高熱様々です。発熱を明らかに認めない場合もあります。
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・甲状腺の痛み
- (2)甲状腺ホルモンによる症状
- 甲状腺に炎症がおこると甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞が壊れ、甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に出てきます。そのため血中の甲状腺ホルモン値が高くなり、バセドウ病と似た動悸、息切れなどの症状が現れます。一時的な甲状腺ホルモン高値の時期がすぎると甲状腺ホルモンは一旦減り、その後次第に正常化します。
検査
以下の検査と症状から診断します。
- (1)血液検査
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- ・炎症の指標であるCRPが高値となります。
- ・甲状腺の細胞が壊れるので、血液中の甲状腺ホルモンやサイログロブリンの値が高くなります。
- (2)超音波検査
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- ・甲状腺のはれや炎症性変化を認めます。
- (3)アイソトープ(放射性ヨウ素)検査
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- ・甲状腺ホルモンが高くなる他の病気と区別が必要なときに行います。
治療
亜急性甲状腺炎の治療中は、運動は避けてできるだけ安静に過ごすようにしてください。 軽症例では、自然に軽快することもありますが、発熱や痛みが強いときやホルモン高値のため頻脈があるようなときは、症状に対して薬を服用します。
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・発熱・痛みに対して
副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)か非ステロイド性抗炎症薬を症状の程度で選択します。副腎皮質ホルモンは症状に合わせて通常2~3ヶ月間で徐々に薬の量を減らします。急な自己中断はせず、中止の指示があるまでは内服がなくなる前に受診してください。また、薬の減量中に症状が再燃する場合は、早めに受診してください。 -
・頻脈に対して
症状がある場合は脈を抑える薬を併用することもあります。
転帰
ほとんどの方が2~3ヶ月で症状が消失し、甲状腺ホルモン値も正常化します。しかし、一部には甲状腺機能が低下したままになり、甲状腺ホルモン薬を内服しなければならない方もいます。再発は稀ですが10年以上経って起こることがあります。