甲状腺の病気について

バセドウ病

治療方法

甲状腺ホルモンが過剰に作られないようにする治療を行います。 内服薬治療(抗甲状腺薬、場合によりヨウ素剤)、放射性ヨウ素治療(アイソトープ)、手術の3つの方法があります。どの方法を選ぶかは、その人の病状、年齢、社会的状況などによって変わってきます。

■薬による治療

甲状腺ホルモンの合成を抑える薬(抗甲状腺薬)を、規則的に服用する方法です。それぞれの患者様の状態に応じて、適切な量の薬を飲んでいれば、1~3カ月で、血液中の甲状腺ホルモンの濃度が正常になります。そうなれば自覚症状もとれ、普通の人とまったく変わらない生活ができるようになります。
薬の治療で大事なことは、定期的に甲状腺ホルモンの量を測定しながら、適切な量の薬を服用することです。バセドウ病の病勢が軽い患者様の場合は、抗甲状腺薬の必要量が減少していきます。1日1錠から2日に1錠くらいで半年以上甲状腺機能が正常に保たれていれば、抗甲状腺薬の中止を検討します。当院の成績では、約3年で薬を中止できる方は約4割でした。

【抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジール〔プロパジール〕)の副作用】
(1) かゆみ、皮疹

薬を服用してから、2〜3週間以内に起こります。何ヶ月もしてから起こる場合は、ほかの原因によるものです。頻度は大体10人に1人くらいです。
かゆみだけであれば、程度が軽い場合はかゆみ止めと一緒に服用すれば消えてしまう場合もあります。
赤い発疹をともなう場合は、薬を中止したほうがいいようです。ひどい場合は食道粘膜にまで炎症が起こったり、39℃ぐらいの熱を伴うこともあります。

(2) 肝機能異常

甲状腺機能亢進症だけでも肝臓の検査で異常が見られることがありますが、この場合は、薬を服用して甲状腺機能が正常になればおさまります。
薬の副作用の場合は、飲み始めて2週間から3ヶ月目ぐらいまでに起こります。AST, ALTが高くなるのみのタイプと黄疸のでるタイプの2つに分かれます。メルカゾールよりもチウラジール(プロパジール)で認めることが多いようです。黄疸の出るタイプやAST, ALTがかなり高値になる場合は中止が必要ですが、一時的に軽度の肝機能異常が認められる場合には抗甲状腺薬の継続は可能なこともあります。

(3) 無顆粒球症

白血球のなかの顆粒球という細菌を殺す細胞がなくなってしまう副作用です。頻度は1000人に1人です。薬を飲み始めてから2週間から3ヶ月以内に起こることが多くまれですが、それ以後に起こる場合もありますので注意が必要です。これは非常に危険な副作用で、放置していると命にかかわることもあります。症状は強いのどの痛みと高熱ですので、単なる風邪と間違って放置しないようにしなければいけません。診断するためには、緊急の血液検査で顆粒球の数を調べる必要があります。

(4) その他のまれな副作用

薬を服用して2〜3週間以内に、発熱とともに関節痛が起こる場合があります。この関節痛は移動性で痛むところが変わりますが、おもに上下肢の関節に見られます。
また、おもにチウラジール(プロパジール)を服用している患者様に見られますが、腎臓や肺の血管に炎症を起こすことがあります。この副作用は、ひどい場合は肺から出血したり、腎不全を起こし透析が必要になる場合があります。この副作用ではP-ANCAという抗体が血液検査で陽性となります。またこの副作用は、服用開始後数年して起こることもあり、薬を飲んでいる間は常に注意が必要です。

■アイソトープ(放射性ヨウ素)治療

放射性ヨウ素を服用して、甲状腺に集まった放射性ヨウ素の働きで甲状腺の細胞の数を減らす方法です。甲状腺細胞の数が減少すれば、分泌される甲状腺ホルモンの量も少なくなります。放射性ヨウ素カプセルの服用後、およそ2〜6カ月で甲状腺ホルモンの分泌は減少してきます。手術のように傷が残らず首の腫れが縮小し、薬より早く治るのがこの方法のよいところです。
ただし欠点は、同じように治療しても細胞が減りすぎて、逆に甲状腺の機能低下を起こす場合があるということです。当院での治療方法では、治療後5年間で、約3割の人に機能の低下が起こります。残念ながら、これを完全に防ぐことはいまのところ困難です。
しかし甲状腺の機能低下は、甲状腺ホルモン薬を服用していれば簡単にコントロールできます。甲状腺ホルモン薬自体には副作用はありませんし、甲状腺機能亢進症で苦しむよりはずっと楽であり、安心です。

【アイソトープ治療による副作用】

放射性という名前がつくだけで、がんなどの副作用を心配する人が多いと思われます。しかし、治療に使う程度の量では、そうした心配がないことが統計的に証明されています。また、子孫への影響もないとされ、アメリカでは治るまでの時間と費用の問題から、妊娠中・授乳中などの特殊な状況の方を除いたバセドウ病患者様の7割は、アイソトープで治療されています。

【アイソトープ治療と眼の症状】

アイソトープ治療により眼の症状が悪化することが1%程度起こると報告されています。治療前に眼科的な検査(診察、MRI検査)を受け、アイソトープ治療が可能かどうか評価する必要があります。
伊藤病院におけるバセドウ病のアイソトープ治療についてご紹介する映像です。

■手術療法

過剰にホルモンを分泌している甲状腺を外科的に切除する方法です。
ホルモンの分泌元である甲状腺を切除することにより、ホルモンの過剰産生を是正するためです。
基本的に全身麻酔で行います。

手術療法の理想的な目標は"内服薬を必要としない甲状腺機能の正常化"です。
この理想を追い求めるために、かつては"甲状腺亜全摘術"を標準方法として採用していました。亜全摘術とは適正な量の甲状腺を残し、残りの甲状腺を切除するという方法です。
しかし、残す甲状腺の量が多いと機能亢進症が再発し、少ないと機能低下症になります。しかも、患者様ごとに適正な甲状腺の量は異なるため、残すべき適正な量を手術前に予測することは困難です。なんとか、適正な甲状腺の量を探るべく、当院では永きにわたり検討、研究を行ってまいりましたが、残念ながら現状ではいまだ実現できておりません。そのため、この亜全摘術後には甲状腺の機能が完全に正常になる患者様は約30%しかありませんでした。
一方で約20%の患者様に機能亢進症の再発がみられました。再発は手術後何年経っても起こる可能性があるので、生涯にわたり検査が必要です。私たちは再発が少なくないことを懸念しました。受験、就職、妊娠・出産など人生の節目に再発してしまうと不本意な結果を招きかねません。

現在、当院では手術療法が望ましい患者様には、甲状腺の全て、またはほぼ全てを切除することをお勧めしています。この手術方法によって、手術後に再発することはなくなりますが、一方で全ての患者様が甲状腺機能低下症になるため、甲状腺ホルモン薬の内服が必要となります。
甲状腺ホルモン薬を飲み続けるということに抵抗がある方もいるかもしれませんが、機能亢進症に比べて心身への負担も少ないですし、内服する量が決まれば甲状腺機能は一定になり体調も安定します。副作用の心配もなく、長期(当院では6ヶ月)の処方も可能になりますので、通院回数も少なくなります。
また、亜全摘術に比較し、新生児バセドウ病の原因である"抗TSHレセプター抗体"も早く減らすことが期待でき、出産も安心です。

この方針により、担当医は患者様に全て、またはほぼ全ての甲状腺を切除することをお勧めすると思いますが、やはり従来の亜全摘術を希望される患者様もおられます。それぞれの手術方法の長所、短所をよく知り、また患者様ご自身のことを加味してお考えいただくことが重要です。
担当医とよくご相談の上、患者様一人一人にあった方法を選択することが最善の方法といえます。

■治療法の選び方

以上のように、3つの治療法にはそれぞれ長所と短所があります。その特徴や甲状腺のはれ方、血液中の甲状腺刺激抗体などのほか、患者様の生活や要望、年齢などを考えて、治療法を選択することになります。ですから患者様ご自身も、治療の長所短所をよく考え、どの方法が一番自分に適切なのか、私たちと一緒に考えてほしいと思っています。

抗甲状腺薬治療が適している方
あらゆる年齢層(妊婦を含む。)
  • 薬をきちんと飲む方
  • 甲状腺腫が小さい方
【長所】
  • 通院しながら治療が可能
  • 診断当日から治療開始が可能
【短所】
  • 治りきるまでに時間がかかることが多い
  • 再発が多い
  • 飲み始めて2~3ヶ月間副作用が出ることがありうる
放射性ヨウ素(アイソトープ)治療が適している方
  • 薬で治りにくい方
  • 薬で副作用がでる方
  • 甲状腺腫が大きい方
  • 早く治したい方
  • 忙しくてこまめな通院が困難な方
  • 近い将来に妊娠の予定がない方
【長所】
  • 薬治療より治療効果が短期間に得られる
  • 副作用がない
【短所】
  • 一度で効かないことがある
  • 甲状腺機能低下症になることがある
  • 甲状腺腫が大きい場合、高血圧や糖尿病などの合併症がある場合、高齢の場合などは入院を要する
手術が適している方
  • 薬で治りにくい方
  • 薬で副作用がでる方
  • 甲状腺腫が大きい方
  • 早く治したい方
  • 忙しくてこまめな通院が困難な方
【長所】
  • ほかの治療より治療効果が早期に得られる
  • 手術後から薬を中止できる
  • 再発が少ない
【短所】
  • 傷跡が目立つことがある
  • 入院を要する
  • 甲状腺機能低下症になる

■バセドウ病眼症の治療について

甲状腺機能が正常化すれば眼症は治るのか

バセドウ病の治療薬として用いられるメルカゾールやプロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)を服用すると、甲状腺機能亢進症はよくなります。甲状腺機能亢進症が正常になると眼瞼後退は早晩よくなることが多いのですが、ほかの眼症はあまり変わらないことが少なくありません。しかし、甲状腺機能亢進症を放っておくと、眼科での治療がうまくいかないため、甲状腺の方の治療は不可欠です。

なぜ、専門の眼科を受診しなければならないのか

治療を始める前に、まずどの程度目が障害されているのか、どういうタイプの障害なのかを調べる必要があります。これは、バセドウ病の眼障害をよく知っておられる眼科の医師でなければできません。また、治療を始める場合でも、治療によって目の障害がどの程度よくなったかを正確に判断しなければいけません。これも、専門の眼科の医師でなければ難しいのです。そのため当院では、オリンピア眼科病院と連携しています。

バセドウ病眼症を悪くするもの

現在、はっきりしているのはタバコです。バセドウ病の患者様でタバコを吸う人は、吸わない人に比べて眼球突出の程度が強いとされています。
これ以外ではっきり眼症と関係があるものはあまりわかっていませんが、一般的に強い精神的ストレスは避けた方がよいようです。

予防はできるのか

現在のところ、原因がまだよくわかっておらず予防法もありません。しかし、甲状腺の治療をしている間に悪くなっていくことはあまりなく、早い時期に検査と治療を受ければ軽いうちに押さえてしまうことができます。何より、気持ちを明るく持っていくことが一番の予防ではないかと思われます。

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